ふむふむ日記

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書評:「ファクトフルネス」:問われるマスメディアの姿勢

「ファクトフルネス」ハンス・ロスリング、オーラ・ロスリング、アンナ・ロスリング・ロンランド著/日経BP社2019年

 

オススメ度:★★★☆☆

 

(コメント)

 私たちは、なんとなく「世界にはまだまだ貧しい国がたくさんいて、物騒な出来事もたくさんおき、良くない方向に向かっている」などと考えがちではないだろうか。しかし、この本では、そんななんとなく漠然とした世界観がいかに異なっていて事実に基づかないものかを丁寧に説明してくれる。裕福で知識豊かなはずのエリートですら、現在の世界に対する認識を間違えているかもしれない。社会は常に変化しており、少し前の見方はすでに今は古くなっているかもしれない。都度、ファクトを見つめるという、当たり前の所作の大事さを教えてくれる。

 これまでの経験からぐさっと刺さる指摘もあった。メディアに対する見方である。メディアは中立では決してないし、時に事実を誇張し、オオカミ少年のように「世界は悪化している」などと警鐘を鳴らしがち、良いニュースは、実はニュースにならない、「やばいかもやばいかも」と言い続けるのが彼らの本質だーそんな著者の指摘は時に本質を捉えている。大切なのはメディアは「切り取る」だけで全てを見せてはくれないということ。気づきは与えてくれるかもしれない。でも実際に確かめるのは自分自身だ。


(気になった言葉)

「いまや、世界のほとんどの人々は中間にいる。『西洋諸国』と『その他の国々』、『先進国』と『途上国』、『豊かな国』と『貧しい国』のあいだにあった分断はもはや存在しない。だから、ありもしない分断を強調するのはやめるべきだ」

 


「わたしたちは極端な話に興味を持ちやすいし、極端な話のほうが記憶に残りやすい」

 


「報道がより自由になり、技術が進歩するにつれ、悪いニュースは以前にも増してすぐに広まるようになった」

 


「出生数はすでに頭打ちだ。極度の貧困率がこのまま下がり続け、性教育や避妊具が広まれば、人口はいずれ横ばいになる」

 


「子供の死亡率が下がり、児童労働が必要なくなり、情勢が教育を受け、避妊にゆいて学び、避妊具を入手できるようになれば、状況は一変する。国や文化にかかわらず、男性も女性も子供の数を減らし、その分子供に良い教育を受けさせたいと考えるようになる。(中略)いま多くの親たちは、自らの判断で子供の数を減らしている」

 


「子供が確実に生きのびられると気づいた親にとって、たくさんの子供をつくるべき理由は、もはやない」

 


「人間はいつも、何も考えずに物事をパターン化し、それをすべてに当てはめてしまうものだ」

 


「『世界は分断されている』という思い込みは、「わたしたち』は『あの人たち』とは違うという勘違いを生む」

 


「人の行動の理由を、国や文化や宗教のせいにする人がいたら、疑ってかかったほうがいい」

 


「サハラ以南の50カ国はいずれも、スウェーデンよりも早いペースで乳幼児の死亡率を改善させた」

 


「メディアの言うことを信じて世界の姿を決めつけるなんて、わたしの足の写真を見ただけで、わたしのすべてを理解した気になるようなものだ」

 


「一つ一つの報道は正しくても、ジャーナリストがどの話題を選ぶかによって、全体像は違って見えることもある。メディアは中立的ではないし、中立的でありえない。わたしたちも中立性を期待すべきではない」

書評:「遅刻してくれて、ありがとう(上)」:ぼーっと生きてんじゃねぇーよ!

「遅刻してくれて、ありがとう(上)」トーマス・フリードマン/日本経済新聞出版社2018

オススメ度:★★★★☆

 

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表紙

(コメント)

 「フラット化する世界」でもおなじみ、ジャーナリストでニューヨークタイムズのコラムニストであるトーマス・フリードマンの著作。タイトルは原題をそのまま訳したとおりで、その理由は冒頭を読んでもらえるとわかります。上下巻と分厚い本ですが、その主旨はただ一つ、「いま私たちが生きている世界がこれまででは考えられないほど加速化(技術革新や気候変動、国の相互依存など)し、私たちを取り巻く社会・環境・生活・仕事などあらゆる事柄が、追い付くのも大変なぐらい変わり続けている中で、いったん立ち止まって考えてみよう」ということ。この主旨に沿って、様々なエピソードが散りばめられています。一部冗長な部分もありますが、それを補うくらいハッとするような鮮やかな書きぶりで、激変する今の世界のガイドブックとなっています。これから就活する人、転職を考えている人、100LIFEをどうしたらいいかわからない人、子育て中の人、この先を見通したい人にオススメです。とにかく、ぼーっと生きてちゃやばいということ。

 

(気になった言葉)

・変化のペースの変わり方と、私たちが学習システムや訓練システム、管理システム、社会のセーフティネット、政府による規制といったことを開発する力は釣り合っていない。

 

・穏やかで安定している気候状況を私たちが満喫しているのは、この11000年間だけに過ぎない。

 

・私たちは生涯学習によって、ロボット、インド人、中国人その他のスキルを有する外国人に一歩先んじなければならない。

 

・“知的な機械が存在する時代に人間であるということは、なにを意味するのか?”

 

・大学の学部課程の知識の半分は、5年以内に時代遅れになる。

 

・自分の学習と絶え間ない再学習に、当事者意識を持たなければならない。

 

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【書評:「子育て経営学」子育てパパ必見】


「子育て経営学」宮本恵理子著/日経BP2018

オススメ度:★★★☆☆

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表紙

 

(コメント)

 子育てを経営学として、と連想させるが、要は経営者や代表を務めながらも子育てに積極的に関わっている30-40代のパパ達のお話です。子育てをめぐってもそれぞれ多種多様な価値観があるので、掲載されていることが全てでも正解でもないですが、「こんなパパいるんだ」ということで、今まさに現在進行形で子育てに追われているパパの皆様には面白い読み物になると思います。ちまたには沢山の子育て本が出回っていますが、学者や研究者の理論やべき論よりも、実際に子育てしているパパ達の日々の過ごし方やモットーなどプライベート満載の話の方が、時によっぽど説得力があります。

 

 

(気になった言葉)

「僕たちの世代が生きてきた時代環境と、息子たちがこれから生き抜く環境は全く違います。(中略)だから、親世代の成功体験を押し付けることは、参考になるどころかリスクでしかない」

 

「(公立小学校に進ませたワケとして)私立の系列校は、同質性の高い環境になりがちです。そうした環境で長く過ごすと、いざ社会に出た時、異文化に対応できなくなる」

 

「子育てで最も重要だと考えているのは、とにかく一緒に時間を過ごすこと」

 

「自我が芽生えていない時期にどういう環境を与えるかは親の責任なので、まさに今、乳幼児期の経験にはこだわりたい」

 

「自分たちでなくてもできる家事は積極的にアウトソース」

 

「興味や関心を文系と理系で分けることの方がナンセンス。自分が心から面白そうだと思えるもに出会えたら、いつでも方向転換していい」

 

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ドラマ評:TRUE DETECTIVEシーズン2 巨悪に噛み付いて、散っていく刑事たち

タイトル:「TRUE DETECTIVEseason2

おすすめ度:★★★☆☆

 

 

※※以下、ネタバレ有り※※

 

 

TRUE DETECTIVE」のシーズン2アマゾンプライムで観了。

HBOチャンネルで2014年から放送されている同作では、シーズン1が多くの賞を受賞し、現在はシーズン3が放送中です。

 

この作品では、シーズン1マシュー・マコノヒーウディ・ハレルソンなど著名どころの俳優さんが出演しており、シーズン2ではコリン・ファレルレイチェル・マクアダムスなどなど、これまた実力派が勢ぞろい。

 

ざっくり話をまとめると、とある殺人事件をきっかけに州、郡、市の3つの警察組織が合同捜査が行われたが、事件の背後には舞台となる腐敗にまみれたヴィンチ市(架空)とマフィアやギャング、企業が絡んだ一大巨悪がうごめいており、主人公となる3人の刑事たちが翻弄されていくというもの。

 

良かったところは、クールで仕事一筋の女刑事(レイチェル・マクアダムス)、可哀想な事件で汚職してるけどなんとか別居中の家族への愛だけでなんとか持ってるオッサン刑事(コリン・ファレル)、本当はすげー良い奴なんだけど流れでハメられてしまう犯罪者兼実業家の男(ヴィンス・ヴォーン)などなど、キャラクターがみんな魅力があって、それがどう絡んでいくのかが面白い。

 

また、冗長な作りのせいか、先の展開がまったく読めず、ハラドキ感はあるので、ついつい観てしまう。

 

この俳優が好きとか、このジャンルが好き、とかいう人にはルーティーンで観てもらって全然構わない作品です。まさに自分の事ですが。

 

 

でも結局、ラスト2話で一気に報われない方向に持っていかれるのが難点。

 

かいつまんでいうと、結局、事件の犯人は、巨悪してる奴らではなくて、そいつらのせいで両親殺されて孤児になってしまってた兄妹のリベンジだったというオチ。

 

なんとなく巨悪の面々がわかるので、どうこいつらに主人公の善玉刑事らが切り込むのか、ずーーーーと待ってたのに、結局、兄妹のさらなるリベンジは止められないし、逆に主人公たちが汚名をきせられ手配されて逃げ隠れするハメに。

 

最終的には、男刑事二人は、汚職警官たちに殺され、レイチェルは途中で関係をもってしまった主人公の男刑事に言われるがまま、ベネズエラに逃避行。現地で新聞記者に、これで巨悪たちを追い詰められるわ!みたいな途中経過のネタや証拠を託しておしまい。

 

つまり、事件の背景には巨大な腐敗があるって思ってたら、結局、私恨による事件でその背景には巨悪があるがそれ自体には切り込めないまま終わるという、超不完全燃焼作。

 

こんな風に締めるなら、ここまで観てきたくだりはなんだったのっていうがっかり感がすごい。

 

さらに個人的には、超強面やり手の犯罪者兼実業家(ヴィンス・ヴォーン)が、巨悪の企みの過程でハメられながらも、着々とリベンジしていってあとは、先に逃しておいた奥さんのところに行くって時に、そこまで存在感がなかった別の勢力に拉致られて、砂漠みたいなところまで連行されて、ナイフで刺されたあげく、放置されるというエンディングが、あまりにも救いようがなくて辛かった。

 

彼は、奥さんの幻影をみながら、「ここで絶対に終わってたまるか」みたいな感じで、血を流しながら、まったく人気のない僻地でとぼとぼ歩いて、最後はくたばる。ちょっと酷すぎない???

 

あと、女刑事レイチェル・マクアダムスは、キャラ設定上、一度も笑顔を見せないけど、やっぱりそこはレイチェルなので、どんな修羅場でも可愛すぎて一人キラキラ輝いて若干浮き気味。「あーレイチェルが頑張って強面してるなー」っていう風にしか見えない。これは配役ミスか。